株式会社アイエスエイプラン
執行役員 CIO
坂爪 昭
入社おめでとうございます、そして「正しさ」だけでは動かない現実へようこそ
新入社員のみなさん、入社おめでとうございます。
今年度は新入社員のみなさんと一緒にこの4月から始まるわけですが、昨年度として一番気づきが多かった本に岡田憲治(2022) 『政治学者、PTA会長になる』*1というものがありました。この本があまりにも興味深いものだったので、この本を利用して入社のみなさんには、私たちの仕事観を共有したいと思います。
著者岡田憲治氏は、専修大学法学部の教授で、専門は政治学という、まさに現役の政治学者です。*2 研究テーマは「現代民主主義理論に関する研究」ということで「民主主義」の権威である大学教員が、PTAという現場の複雑さと向き合いながら学び直していく記録です。そこでは、正論だけでは人も組織も動かない現実が描かれています。
私たちの仕事も同じです。顧客には、事情があり、歴史があり、感情があります。まずは「何が正しいか」より前に、「相手が何を達成したいか」をつかむこと。ここから、私たちのプロとしての仕事が始まると思っています。
*1岡田憲治(2022)『政治学者、PTA会長になる』(毎日新聞出版)
https://mainichibooks.com/books/nonfiction/pta.html
*2専修大学研究者情報システム「岡田憲治」
https://kjs.acc.senshu-u.ac.jp/sshhp/KgApp?resId=S001534
ロジックは勝つための武器、目的は迷わないための羅針盤
ロジック(論理)は武器として重要です。仮説を立て、検証し、再現性のある提案に落とし込む。これは私たちの仕事としての基本です。しかし、ロジックは「目的を達成するための手段」であって、目的そのものではありません。*3 業務効率化を例にすれば、クライアントの本当の目標は「工数削減」ではなく、「顧客対応の質向上」や「現場負荷の平準化」かもしれない。システム刷新の目的も、「新技術導入」ではなく、「事業継続性の強化」かもしれない。
みなさんには、依頼の言葉の奥にある意図を「コンテクスト」として読む習慣を持ってほしいと思っています。数字の裏にある現場の不安や期待まで読み取ることが、信頼されるアイエスエイプランの人材への第一歩となっています。
*3 「目的」と「手段」が入れ替わってしまうことは、約60年前から語られているが未だに解決しない世の中の七不思議のうちのひとつなのかもしれない…以下、代表的な課題認識の参考図書。
ロバート・K.マートン, 森東吾訳(1961)『社会理論と社会構造』(みすず書房)
https://www.msz.co.jp/book/detail/09705/
クレイトン クリステンセン,伊豆原弓訳(2001)『イノベーションのジレンマ』(翔泳社)
https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798100234
ジェリー・Z・ミュラー,松本裕訳(2019)『測りすぎ なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』(みすず書房)
https://www.msz.co.jp/book/detail/08793/
「相手の成功」を設計する
これからみなさんが担うべきは、成果物を納品することだけではありません。相手の成功条件を定義し、実装し、定着させることです。
そのために、以下の3つを意識してみてください。
1.目的を先に確認する
「この作業は何の成果につながるか」を、着手前に言語化する。
2.関係者の成功条件を整理する
決裁者・実務者・利用者で、成功の定義は異なる。
3.実装と定着まで責任を持つ
提案して終わりではなく、利用され続ける状態まで設計する。
「正しい提案」より「利用される提案」。「美しい資料」より「動く現実」。この視点を、入社初日から持ってもらえると上手くいくことが多くなると思います。
自分たちで決め、前に進む
最後に『政治学者、PTA会長になる』が示す大きな学びの一つは、現場における自治、つまり「自分たちで決める力」の重要性です。会社も同じです。誰かからの指示を待つのではなく、目的から考え、提案し、合意をつくり、実行する。うまくいかない時は、誰かを責めるのではなく、仮説とプロセスを見直すことが重要になってきます。
みなさんがこれから向き合うのは、簡単な課題ばかりではありません。だからこそ、正論だけでなく、対話と共感、そしてやり切る実装力を持つ人になってください。
みなさんの成長が、会社の未来をつくります。一緒に、目的達成に本気で向き合うチームをつくっていきましょう。改めて、入社おめでとうございます。
